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通過するだけで作用する「食物繊維」に迫る

青江誠一郎先生
大妻女子大学 青江誠一郎先生
青江 誠一郎(あおえ せいいちろう)プロフィール

1984年 千葉大学大学院園芸学研究科農芸化学専攻・修士課程修了。1984年 雪印乳業株式会社入社、1989年 千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了(社会人入学)、 農学博士を取得、2003年 大妻女子大学家政学部助教授、2007年より大妻女子大学家政学部教授。2007年日本栄養改善学会・学会賞受賞、2008年日本酪農科学会・学会賞受賞、2010年日本食物繊維学会・学会賞受賞。

 栄養成分として、よく表示を見かける食物繊維。ひとことに食物繊維といっても、実はいろいろな種類と機能があることをご存知だろうか。大妻女子大学で教授をとして教鞭を執る青江さんは、学生時代から食物繊維の研究に取り組み、日本食物繊維学会の常務理事も務める権威だ。「学生だった当時はやっぱり白米が上級という価値観で出来るだけ玄米のぬか部分を削った方が消化が良く、美味しいという流れでした。オオムギでも同様でしたが、私はその捨てているところに注目していました」。調べると、さまざまな機能が、その中に隠されていたと青江さんは言う。

食物繊維から「ルミナコイド」へ

 そもそも、食物繊維とは、どのようなものだろうか。実は、その定義自体は、国内でも2種類あるのが現状だ。「一つは、食物繊維の分析の公定法として認められているプロスキー法(※)という方法で測定できるものを食物繊維と言います。これが一番古典的な定義。一方で、厚生労働省が定める栄養表示の法律がありますが、そちらの場合は三糖(単糖が3つつながったもの)以上で、オリゴ糖も含む。この2つで、食物繊維として扱う範囲が全く違うのです」。そして、国によってもその定義が違っており、単糖が10個以上つながった、十糖以上を食物繊維とするものや、植物由来の成分でないと食物繊維としない国もある。さらに、レジスタントスターチと呼ばれる、消化しにくくなったデンプン類も食物繊維に含める動きも出てきた。これは、一度加熱したあとに冷めることで、難消化性になるデンプンもあるため、定義が混沌としているのが現状だという。ただ、人間の消化酵素で分解されず、小腸を通って大腸に達し、体全体の機能を改善するのが大きな意味で食物繊維の効果の括りだ。そこで、「そういう概念を、私が所属している学会では『ルミナコイド』と言う、一つの概念にまとめることを提唱しています。消化されないで、体にいい働きをするのをまとめて扱おうということを、学会では勧めています。どれが食物繊維で、どれが食物繊維じゃないか議論し始めるとキリがないですから(笑)」。ルミナコイドとは、消化管を意味する「lumen」と「accord(調和する)」に「oid(〜のようなもの)」を組み合わせた造語で、「ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食品成分」と定義される。

注目度の上がる食物繊維

 その働きもさまざまだ。まず、胃の中に長くとどまって腹持ちがよくなる効果や、コレステロールや血糖値の急上昇を抑える生理効果がある。また、腸内細菌にとっては、食物繊維は格好の食料になる。善玉菌が増殖することで発酵が進んでpHが下がるので有害菌は増殖できない。また、善玉菌が分泌する短鎖脂肪酸は、消化管ホルモンの分泌を促しており、消化器系臓器の動きや消化液の分泌を調節しているという。さらに、βグルカンなどの物質は消化管に触れることで消化管免疫を改善する、直接的な相互作用もあるという。
 しかし今、平均的な日本人が1日に摂る食物繊維の量は約14 g。昭和30年代は20〜25gであったことから見ると、摂取量は大幅に減ったと言われる。「実は、野菜を食べる量は減ってないんです。それなのに、食物繊維の摂取量がこんなに減ったのは、穀物から摂る食物繊維が減ったためです。できるだけ主食に穀物の食物繊維がはいっているものを摂るようにすれば、摂取量が回復する可能性がある」。
 青江さんは、大麦とその食物繊維であるβグルカンを中心に研究を進めている。さまざまな穀類との比較も行うが、血糖値やコレステロール値に効果を発揮するものとして、大麦は機能性が突出しているという。「疾病を予防するというときに、薬理学的な考えだと、体内に吸収されて働くようなものですが、食物繊維はおなかの中を通るだけ。通ることによって消化管と相互作用して健康に影響するっていうのは、医学の世界ではなく、食べ物でしかできないことです」。青江さんは、食物繊維の研究の面白さをこう語る。具体的な作用機序がわからないとして、これまで医学界からは食物繊維にはほとんど注目が集まらなかったそうだが、近年は講演に呼ばれるなど、少しずつ状況が変わっていると青江さんは話す。「例えばコレステロールにしても、ただ食物繊維がトラップして体外に出すのであれば、かなりの量の食物繊維を取らなければならないでも、普通の食生活の量でちゃんと下がるのだから、ただコレステロールをトラップして出しているだけではなくて、たとえばコレステロールの合成を抑えたり、さまざまな方向から作用しているはずです。まだ解き明かされていない部分があるので、そこを研究していきたいと思っています」。
 徐々に体との関係が明らかにされはじめた食物繊維。この研究は、さまざまな食品の良さを明らかにし、健康に役立てる大きな柱になるに違いない。

 

※プロスキー法…食品を一連の消化酵素で処理を行った後、78% エタノールで沈澱した物質の重量を食物繊維の総量とする方法。

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